2010-09-23

SGY

先週見た映画をかいつまんで感想なんかを書いてみる。


メメント
前向性健忘(発症以前の記憶はあるものの、それ以降は数分前の出来事さえ忘れてしまう症状)という記憶障害に見舞われた男が、最愛の妻を殺した犯人を追うサスペンス・スリラー。
 出だしは妻を殺した犯人を射殺する場面から、時系列を逆にして進んでいく。「こいつは信用ならない」とメモしていた奴が実は…、だったり「この人は信用できる」って奴が…、だったり、「完全主人公視点」から撮っている映画(感情とその場の状況に翻弄されっぱなし)なので見ている側は何も信じられない。その不安定さがまた好奇心を煽る。最高に何度も見返したくなる映画を作るなあ。一瞬たりとも気が抜けないかんじがいい。気が抜けるようなのだと眠るからさ

イースタンプロミスもそうだったんだけど、わたし『刺青』だとか『ピアス』が苦手でしょうがなくて、しかし「黒単体」の入れ墨はアリだと思った。そして活字!活字!イースタンプロミスの指に入れ墨は最高に滾った…一瞬マジで入れようかと思うくらい滾りました相当痛いらしい(末端になればなるほど痛い)と聞いてやめたけども。精神的なドMじゃあるんだけど痛い事苦手だから。
それにしてもガイ・ピアーズの演技はよかったな〜。ヘタレからキレキレの男まで、自由自在。カメレオン俳優だね。そういえばTHE ROADにも出てたのか、DVD楽しみだな!はやく出ろ!
そして妻役のジョーシャ・フォックスにびっくりした。サラかわいいなサラ(違う)前歯が超キュート。きゃわええー。

 C.ノーランの醍醐味の伏線満載のどんでん返しが最高に楽しい。何が素晴らしいって、普通の時系列で見ていくと割とありがちな展開なのに、それを逆転させて、かつ映像テクニックでものすごく画面に引き込む力があること。ほとんどBGMがないのもまた淡々としてて効果的。
ラストの乾いた無常感がまたいい。事実よりも甘えが勝つのが人間だしね。


アイランド
クローン人間と政府の非情なエージェントとの死闘を描くSFスリラー。
臓器培養のため育てられてたクローンが実験施設から脱走するっていう割とどっかで見た事ある筋書きなんだけども、まあユアン・マクレガーが出てるから見たとか言ったら怒られそうだから黙っておきますけども、
おいおまえら人間かよ!
とまず突っ込んでおきたい。実験施設から脱走したときも傷ひとつないってどういう事だよ!70階の高層ビルから落ちてかすり傷ひとつってどういうことだよ!ていうかド派手にぶっ壊してんのにモブの死体がまるで出てこないってどういう事だよ!ていうかなんでみんな死なないんだよ!「クローンの倫理問題」がネタなのになぜ人が死なないんだ。わからん。まじでわからん。なのに悪役の死に方はわりと酷いってどういうこと。
とまあ後半は不満満載なんだけども、
前半の脱走するまでは割と面白かったです。生産過程のクローンが合成樹脂の子宮の中で蠢いてたりとか。記憶の刷り込みだとか。クローンの臓器を採取するシーンだとか、SFが好きなら舌なめずりして見るような映像。画面もスタイリッシュだし見やすい。
が、一転逃亡するとなるとただの一連の追跡シーンだけに成り下がるのが残念。人間の倫理観に訴えたいならモブだって何だって殺すべきだとおもう。ていうか主人公のクローンこそ殺すべき。悪役だった施設の医者だとか、クローンを発注した顧客が死ぬのはいいとして、「悪を倒した!これから自由だ!」っていうエンドは短絡的すぎる。国も絡んでのプロジェクトだから殺処分になるんだろうけども、そのへんのリアリティがなさすぎてすごく違和感が残る。
ていうかこんなに「主人公死んだらしっくりくるエンドなのに…」と願いながら見た映画もそうないぞ…

そしてメリックとトムの死に様に「あんまりだああああああ」と思ったのはきっとわたしだけじゃない筈…テラ公開処刑!特にメリック!かわいそう!超かわいそう!もっとましな死に方があった筈だ!
ショーンビーンは出てる映画の6割は悪役でだいたいかわいそうな死に方をするので割と同情できない悪役ばっかりなのになんだか泣けてくる。

しかし瞼から異物突っ込んで「痛い」ってゆってんのに「気のせいだ」とバッサリ切り捨てるショーンビーンの鬼畜イケメンさと毎度のもっちもち童顔な(爆笑)ユアン・マクレガーの贅肉がおいしかったのでもういいや!いいや! 笑



インディアンランナー
ショーン・ペンの処女作としてわりかし有名だけども正直に白状するとヴィゴ・モーテンセンが見たかった。
ブルース・スプリングスティーンの「ハイウェイ・パトロール」がまんまのあらすじ。(ベトナム戦争帰りのPTSDでぶっ飛んだろくでなしの弟と、実直な警官の兄の話。)あらすじっていうかすでに流れ全部。歌詞を読むと完全にネタバレになるよ!捻りもなにも無し!笑
ちなみにエンドロールで流れて爆笑したよ

これを見たのがアイランドの軽々しさをもやもやと引きずってた翌日の朝だったので、救いも何もない遅々とした展開とラストに逆に救われてたです。『ああやっぱり現実こうじゃなきゃ!』みたいな。つくづくハリウッドの派手な映画に縁のない嗜好ですな。とことんぶっ飛んだ馬鹿映画なら大歓迎なんだけど、そこにちょっとでもシリアスじみたものが混入すると途端に厭なチープさになるので拒否反応が。なんて過敏な…。

どうもショーン・ペンは『リアルさ』に凝った映画作りをしたかったらしく、パトリシア・アークエットのボカシ0の出産シーンはマジものらしいです。
91年の映画なのであの異様なリアルさはもしや本物なんじゃ…と思って調べたらやっぱりマジなんだね!ごめん引いた!
ってゆうと多分すげー勢いで怒られるとおもうんだけど、しかし自分の目で見る(とか産む、)のとカメラのファインダー越しに撮影されたごく第三者視点で見るってだいぶ違ってくると思う。感情とは関係なく「生まれ出てくるもの」ってものすごく未知なものだからこんなに気味悪く感じるかもしれん。そりゃフランクもダッシュで逃げるっていう…。

この映画は大きな矛盾で出来ている。兄と弟、生と死、善と悪、いろんなメディアで取り上げられがちだけどもしかし普遍的な要素も持ち合わせているのは確かだ。全て混ぜ合わせてごちゃごちゃにしたのが気味の悪い社会であり現実だ。やっぱり根底には乾いた無常感というのが漂っていて、弟のように現実から逃避するにしろ兄のように現実を容認するにしろ、あるのはラストにあるような暗く長いハイウェイだけなのである、とかゆってみる。


ほんとーにわたしはうすら哀しい自嘲的映画かとんだ馬鹿映画かどっちかしか好きじゃないな…まったく。
多分自分が相当自嘲的で皮肉屋だからなんだろうな。最近自分が相当皮肉屋なことに気がついたよ。遅い。ネガティブなのは分かってたんだけどね〜
全力で後ろ向きな自分を嘲笑するのが好き。とんだドMだな。
だって描くものだいたい自画像に近いんだよ!そう!自画像なんだよな!『薄汚いだらしないからだのおっさん』が好きで描いてるんじゃなくて、『薄汚い哀愁漂うおっさん=自分』なんだよなんで気付かねえの…笑
_

0 件のコメント:

コメントを投稿